住宅・税制・中国問題など 現状を冷静な目で見ると・・・・・・
                              語る人 原口 博光氏

トークシリーズ

 ツーバイフォー工法住宅の生産設備機会メーカーである日新興産梶i東京・板橋区)社長の原口博光氏は、2000年5月号のトークシリーズで「景気の安定は恒久減税で、財政赤字は歳出削減で行うべき」であると力説し、21世紀に入る前に政治も経済も転換を図っておかなければならないとの趣旨を述べえている。

 当時を振り返りながら刻々と変化する今日の現状に対して、冷静な目で分析するならば余りにも課題が山積みしたままで、解決の道程が漠としてスピード感がない、とその思いの一端を熱っぽく語り始めた。」     (本稿は三月八日に収録)



現実からみた住宅産業の課題
 昨年、ツーバイフォー工法の全面改定が行われ38条認定が15年6月末までの移行措置の後廃止される。この認定は本来の住宅の高品質化と資産価値を高めること或いは高気密、高断熱、耐震性に寄与する面にあった。元来、高品質な住宅が資産として長く受け継がれていくことが非常に大事なのに、日本では、15年程度の経年で価値が15パーセント程度に下がってしまう。一方アメリカでは85パーセントも資産価値を保持している。現実にはデフレスパイラルのもとに低価格の流れがあり、建築基準の性能規定化や品格法が制定されて住宅の資産価値を高めようとスタートしたのでは逆方向に向かっているのではないかと・・・・・・。現状は目指さなけれいけない住宅の質の向上が、逆に低価格を求める方向に進んでいる。低価格追求のコア・コンピタンスのあるビルダーであれば、顧客は歓迎し納得するであろうが。

 例えば38条の認定でもランバーに関して同条の基で取り組んでいるビルダーは快適な住宅を追求するにあたって高付加価値や資産価値を求めるコア・コンピタンスを持っている。そのノウハウの表れが「二十四時間全棟熱交換システム」「全棟Q値表示」「C値測定」等々で顧客に提示される事になる。

 この点において、他産業に比べ住宅産業は人海作戦に依存している。さらに種々の規制がコストを押し上げている。それは単なる材料の問題ではなく工法、要するに加工技術を含めて総体的な問題を派生していく。例えて寿司ではネタが良くても職人によって素材を生かせる場合と生かせない場合がある。大切なことは素材の加工技術であり、単に材料がいいからいい住宅ができるということとはイコールではない。その企業が培ってきた資産価値を高める住宅は何かが一番問われるのである。これこそが企業のコア・コンピタンスである。

 今、日本の置かれている状況は我々の機械業界も同じで、ただ安いもの安いものへと追うと、結局、設計・材料・構造の中で何かを省くことがポイントになってしまい、最終的には利用頻度に耐えられない段階が早く来る。世の中が安いものを求めすぎれば資産価値を益々減らすことに拍車をかけることになり、生産性を低下させることになる。



企業努力が問われる社会構造に

 企業は効率化、生産性を高めることによって価格を下げて生き残りをかける。こうした手法こそが本来の意味での価格競争であるが、商品の性能を低下させるだけの価格競争へ迷い込んでしまっているとは思わずにはいられない。技術は一朝一夕で成し遂げられるものではなく、長期の時間をかけた企業努力の上で成し遂げられる。そういう企業努力を着実に進める企業の存在が見えるような社会構造にしなければならない。価格から価値へと判断基準が変遷していく事が国の文化水準だと思うのだが、如何なものだろうか。



住宅建築は経済効果を波及する産業の根源である
 住宅の着工件数が、昨今の景気後退で120万棟を割ってくる現状で、一番大事なことは各企業の経営努力とは別に国の税制の問題を根本的に是正しなければいけない。特に財務省では税の中立性というが、国民の立場に立って税が国民に負担をかけないようにする税制が最終的には経済を活性させる。

 住宅の税制に関して取得時に消費税と不動産税を払うのだが、消費税は国税で不動産税や固定資産税は地方税で、払う側にしてみれば2重取りされていることになる。なんで固定資産税を払って消費税を払うのか、本来、住宅に消費税があること自体おかしい!この消費税をなくすことで購入者の負担を軽くする。負担が減れば購入へとつながり、ひいては経済を活性させる原動力となる。私はこの問題を随分前から各メディアを通して消費税はなくすべき、ローン金利は所得控除すべき、を訴えている。



国民が主役であることを忘れてはならない
 国は常に徴収側から物を考えるのではなく、日本経済を如何に活性させるか、強いては国民1人1人が公平な成果の下に快適に生活できる社会を構築する政治を行うべきだが、国は国が主役であると考えている。だから日本は本当の意味での民主主義国家ではない。その点が社会主義国家なのである。重ねて言う。税収が減ると考えていること自体が国が主役であり国民不在の証である。税収減の事由を究明し対策を迅速に行う事である。所得税、法人税の恒久減税化も可処分所得が増え国民生活を豊かにし長期的には税収は必ず増大する。

 住宅が購入しやすくなれば経済が活性化する。すなわち住宅建築はセメントから始り、木材、建材、アルミサッシ、ガラス、電化製品、自動車、と当然の事ながらあらゆる産業にシナジーをもたらす。

 住宅産業は。特に他産業への波及効果が大きく、試算として100万棟の住宅が増加すれば、GDPを0.495パーセント推し上げ26万人の雇用を創出する。住宅投資の景気浮揚策は公共投資を約10パーセント上回っている。この試算に基づいて経済を活性化させることこそ政治の弾力性ではないか、だから現行の住宅減税のように短期で時限的なものでなくて、長期の視点にたった本格的な住宅に関する税制に変えなくてはいけないと切に思う。



日本を支えているのは製造業であることを再認識すべきである
 今日の話題の1つに中国は「世界の工場」を標榜するプロパガンダで推進している。それらを含めて世界が大きく変わりつつある中で日本は変わろうとしない状況に陥ってしまっている。

 日本の一般的な製造業は元気がないと言われていることは確かに事実だけれど、21世紀にかけて日経で評価の高いミレニアム企業の上位15社のうちの11社が日本の製造業である。この事実からして日本を支えているのは過去も将来も製造業と言える。日本の輸出額は50兆円を超え色々な面で製造業は健在だが、ただここにきて大きな問題は国内メーカーの海外の生産額が57兆円と国内生産をすでに超えていることである。このまま製造業が海外にウェイトをシフトしたら危険な状態になる。特許面などからみるとアメリカ国内における特許を日本は約21パーセントも占め、3位はドイツで6パーセントと低い、次いでフランス、イギリスの順で日本の技術力はそれだけ高い。この高い技術力をこれからも維持することがとりもなおさず日本の空洞化を防ぐことに繋がる。ここをしっかりしないといけない。2000年日本のGNPは517兆円、イギリス、ドイツ、フランス3国合せたそれに匹敵している。

 個人消費310兆、製造業125兆、海外生産52兆、政府予算50兆、金融証券業25兆、パチンコ22兆に数字から、不況対策の第一は個人消費の活性化であり、住宅減税、贈与税、相続税の非課税化、所得減税である。

 第二は製造業の空洞化対策として優遇税制の確立(工業用地対策、減価償却の短縮、研究開発促進税の改革等々)、法人減税、政府予算の公共投資ではデフレスパイラルは克服できない。本来技術の変化が早ければ、海外より国内で生産しないとスピードについていけない。メガ・コンペティションに勝ち残るにはグローバル化に対応できるコア・コンピタンスの確立が不可欠である。「パロキュアリズム」からの脱却、ベンチマーキングや業務提携、更にバーチャル化の時代になった。



愚者、象を撫でる心得で最新の注意を払うこと
 企業が中国一辺倒のような形で中国にどんどん進出し、「中国は世界の工場」とか或いは「中国との共存共栄」であるとか、「中国を取り込む」といったキャッチフレーズガマスコミを賑わしているが、実際に中国とは大変な戦略国家であって中国を取り込むなど日本ができるわけもない。

 例えば中国がアセアンへの働きかけで、自国より弱い国とみればそれらの国には大幅な譲歩をするけれども、対等若しくは強い国に関しては譲歩はしない。そんな中国のスタンスは簡単にいえば共産主義の国であって共産主義とは妥協しない事である。今、外国からの資本が大幅に入って、その資本の額たるや大変な額である。昨年までに企業を中国が受け入れた外資系企業数はなんと38万社に上り、その外資に利用額は7170億ドルと膨大な金額で、働く人は2千万人いる。

 台湾は日本より先に中国に進出したがすでに空洞化による異常な経済危機を引き起こしている。大陸への投資が台湾企業を救うはずが逆に台湾企業を圧迫してしまった。台湾は日本に次ぐ外資準備高があったが今や中国に追い抜かれてマイナス成長となってしまってしまい、豊かになるどころではなくなった。韓国も同様である

 台湾から5万社(10万社とも)が大陸を出た後を追うようにして韓国も大幅に進出したが、その韓国も対中国に関しては貿易破綻して終わった。だから日本も過去に進出している企業の歴史を見るとそこから学ぶことが非常に大事ではないかと思う。世界は1つという発想もグローバルスタンダードにおいては大切だが、ダブルスタンダードという発想も出来なくてはいけない。

 アングロサクソンビジネスの落とし穴に注意しないと、金融ビッグバンの如く、日本の金融業界の体質に過度な弊害をもたらしてしまう事になる。



人件費の安さだけを頼る危険な進出
 この10年間、中国の急激な変化が経済界においては中国の独自な工夫や独自の投資のノウハウによってなされていないことに着目しないといけない。台湾、韓国、アメリカ、日本と、当然ヨーロッパ諸国の海外投資と加工技術がもたらされ、よって外貨を獲得している。今、外貨獲得は日本が世界一で、その次に中国はなった、対外的な要因で国策として外資を受け入れる税制を作っており、基本的には人件費が安価である事に起因している。ユニクロの衣料品にしても中国で安い人件費を基にした価格の基準にある。

 実際問題としてGDPは中国では1人当870ドル程度、日本は3万2000ドルと違い、その国の物価が当然違うのだから、その価格差が流入することによって当然、そこには混乱が発生し産業の空洞化が起きるのは必然である。これが急激でああるほど日本は失業者が増え最終的には経済の混乱を招き、逆に中国はそれだけ成長する。

 今、元はドルペック制だからドルに対しては固定している。日本はそれに対して変動相場制だから価格を決める面においても構成が違ってくる。おそらく元はこの先10年間は(断言できないが)変動相場制には移行していかないであろう。反面で日本はこの先10年間は為替差額に苦しむことになろう。

 一企業が人権費が安いことを頼って利益を出そうという発想で中国に進出することは大きな問題を残す結果となる。中国国内で外資系が雇用している中国人は200万人以上、契約ベースの外資利用額は7170億ドルに達する。
台湾企業の中国進出で、国内空洞化現象は顕著になりGDP成長率で2001年マイナス2.35パーセントに落ち込んだ。

 台湾企業を救うべき中国出資が台湾企業を逆に脅かす事になってしまった。目先の労働賃金の安さに取り付かれた結果に他ならない。



過度の集中による反作用現象
 そこで日本は産業政策とか輸出対策を洗いなおす必要が出てくる。せっかく習得した固有の技術や流通などのノウハウは、苦労して企業が培ったものであり、いとも簡単に海外に流出して、それが最終的に価格競争という形で脅かされる結果は誠に好ましくない。中国の需要を満たすため消費財を部分的に中国で生産する事は企業戦略上必要かもしれないが、高付加価値製品に関しては注意しなくてはいけない。特に最先端のハイテク技術は最終的には最先端の兵器に転用される危険性もはらんでいるということを忘れてはならない。

 現時点において中国はあたかも経済が自由化されているようだが、国の体制は実際には政経分離されていないので何か問題があれば日本の動きに対しても常に対抗措置をとってくる。いとも簡単に国といえども共産党の方針によって変えられてしまうことに注意したい。
産業が自由に行き交うことはいいことだが、1国集中の怖さを早く感じ取って欲しい。

 日本企業の海外シフトは適地生産でなければならない。貿易摩擦を解消するため、米国に自動車生産業が進出した歴史に学ばなければならない。本来、海外生産は広く世界に生産を求め、進出先の需要のバランスを取る事にある。

 日本のデフレに関しては、結局、中国に進出することがデフレを助長させている。工場を拡大して安い商品を日本へ、結果的には中国経済を富ませている。その後にくるであろう怖い現象は日本何するものぞ!、日本は小国だ、みたいな中華のナショナリズムの肥大化によって新たな日中の問題点を起こすことになれば、それはすべて過度の集中が引き起こす結果であり、常にその反作用は大きくなる論理であるだけにいち早く政策的な対応を促したい。


 今のまま日本が中国に生産拠点を移すと台湾、韓国の二の舞いである。まず思想面においてイデオロギーが違うことは物事を結滞する場合に大きな要因となる。文革時代、各地の孔子廟は破壊された。日本人の多くは孔子の教えを勉強したが、中国では共産主義によって孔子的発想そのもの教えがなくなってしまっている。それを誤解してはいけない。だから共産主義から論語精神なんて忘れられて全然その教えの論理がなくなっている。言うなれば中国は革命から今日まで儒教を禁じたことは現実で、結果として論理観は欠如してしまった。中国はここにきてそれに気づいて孔子を勉強しようと教材に取り入れ始め「文明衛生」に取り組んでいる。

 日本人は論語的に中国人を儒教精神でとらえるなら大変な間違いであり、もう1つ見落としてはいけないのが軍事費である。ここにきて17パーセント以上軍事費が増加している。これは軍国主義国家の表れで、もちろん中国と協力して補完的な関係を日本は築こうと思っているけれども、果たして中国はそう思っているのだろうか。その辺りも根本的なアジア太平洋の安全保障を考える必要があるのではないか。
中国は平和解決のために台湾武力解放の選択肢を放棄していない。



中国の急成長は日本の急衰退と捉えよ
 「かんばん方式」、QCサークル活動、人偏の入った「自動化」等、日本の生産管理システムが世界に輸出された。製造業は付加価値を生み出す源泉であり、数々の産業を派生させ、所得水準を上昇させ、最終的には人創りへつながっていく。日本には産業構造の中で形成された優秀な下請企業群がある。品質を確保するQCもアメリカのデミング博士の理論だが、それを実践したのは日本で、製造や加工、技術のノウハウの蓄積が一杯あることに日本人は自信を持たなければいけない。「ファクトコントロール」が徹底しているのだ。日本は小さな国土で人口を減る一方、方や中国は13億のうち未だ四分の三位の農業人口が余っている。その人たちがこれからどんどん都市部に出てくる訳だから、むしろ現状は序の口と思わなければいけない。

 ただWTOの参加によって関税の問題即ち貿易障壁の問題が出てくるので中国もこれからは厳しい状況に追い込まれるはずである。海外の人件費の安いところとどう対処するかは、品質のいいものを作ることにおいては日本は世界一だから行きつく先の人件費問題は自動化によって対処できる。例えばドイツやイタリアの製造業も海外に移しているところもあるが、基本的な部分は全部自国で持っている。ドイツ、イタリアでは中国に進出する事による国内空洞化は起きていない。特にイタリアでは今もってブランド商品群を全部ユーロッパの中で作っているのは高品質とか付加価値を大切にしているからである。歴史と伝統で作りあげてきたものを単に価格差だけで技術移転することをヨーロッパはしていない。移管する場合に必ず技術料や特許料或いはライセンス料を契約することで、保有国の技術は保護され収入につながるのである。ところが日本は、中国に人達に教えた加工技術の副産物が中国や香港のコピー品になってしまった。技術を覚えた人たちがやはり繰り返しコピー品を作ることになる。日本企業の漏洩防止対策が望まれる。

 中国で元気な会社といえば私企業が上げられる。その私企業が実際には外資系と組んだり或いは外資がらみの企業が多く存在する。中国の現状は日本が復興に道を辿った独自の技術によって勝ち得てきた産業構造ではない。安易に物事を知り得た国は真似た形で安易に物を放出するし、それが常に価格崩壊につながってくる。中国製品の価格破壊に日本が巻き込まれてしまえば、これが一見日本にとって安いものが輸入されているように見えるけれども、実際には日本の産業構造そのものを破壊していることになる。日本にとってこれから大きな問題になってくると思っている。

 他国との製品差別化で輸出産業を振興させるべきだ。光産業、ナノテクノロジー。超鋼鉄、有機材料、炭素繊維、バイオテクノロジー、等々世界に冠する産業は日本の製造業の柱としなければならない。技術の変化が次々と新しい技術を開発して。他が取り組む前に先行することこそ技術立国日本のあるべき姿である。



遊休工業用地買取機構の設置を!政官制度の硬直化が日本の産業をダメにしている
 日本国内に関して国でなければできない問題がある、それは今、日本各地の工業団地で中国への転出や倒産で空き地が目に余るほどになっていることだ。これらの工業団地がら誘致の資料が送られてくるが、この現象が現れる根源を解決しなければ日本の産業の再興はないとみている。この局所的な一つの現象から社会現象につながり大きなメガトレンドになっていく。それが経済を発展させるなら良いのだが、今は縮小のトレンドにある。これをなんとしても断ち切らなくてはいけない。

 民間企業活性化のために工業団地を地方自治体が造りました。しかし予定した企業は不況で誘致できないばかりか、逆に中国に進出してしまい土地が空いています。が全国的にいっぱいある。ここは国内の製造業に優遇策を取り入れて特別な税制を作って対抗しないかぎり現状に歯止めをかけることはできない。国と自治体が遊休工業用地を買い取り製造業に安く貸す。要は国が産業振興と優遇税制の両面から支援戦略を見直さなければ回復への道は遠い。中国もそうして海外を呼び込んだし、古くはシンガポールが優遇税制を取り入れて外国企業を受け入れた。なぜ海外で成功している例を日本はこの危機に直面している産業界に対してそれができないのか!、ここにも日本の硬直した機構がある。これこそまさにこれからの構造改革である。

 決して中国批判をしているのではなく、また日本のナショナリズムの発想でもない。経済面においても総てにおいて日本人があまりにも平和ボケしてしまっている。ちなみに当社で受け入れた中国の招待留学生は、国立大学の博士課程をクリアして取得した。その優秀な人材を三年間教育した経験がある。まず一年目は現場を、二年目は設計を、三年目はソフトという順に教えた。日本人があつて欧米に行き勉強したのと同じように彼らが日本で学んだことを中国に持ち帰り独自に産業を立ち上げ、そして日本で勉強したノウハウを生かして成長するべきだと思っている。

 ただ日本がお金を全部出します。生産設備は持っていきます。加工技術も教えます。では空洞化現象を起こすのは当然である。企業の採算ベースだけを考えて海外に進出することは、国益とした果たして如何なものかを経済人は考えていかないといけないのではないか。



技術革新と税制
 技術革新のスピードに対して日本の税制はずいぶん硬直的で原価滅却制度にしてもマッチしなくなっている。あまりにも技術革新が速いから減価償却も早めなくてはいけない。今、我々の業界の機械は10年としているが、これも技術革新のスピードに沿った減価償却制度を確立しなくてはいけない。それが経済を活性化させる早道である。経済の活性化は物が動くことの方向に持っていかなければいけない。企業が研究開発を進め、技術革新に取り組んでいく事が産業構造の高付加価値化となり、空洞化を是正する事にもなる。行政の支援すなわち優遇税制が必要となる。



経済の活性化のための税制に生前贈与、非課税枠を三千万円へ
 本来、所得税で税金を払った国民が自由にできるお金に対して何故相続税を払わなければいけないのか!贈与税、特に給与所得者の贈与に関しては考えなくてはいけない。住宅所得資金の生前贈与は現行非課税枠550万円だが、3千万円まで広げれば、世界一の金融資産が動き出し、デフレ対策としての効果は大きなものがある。住宅金融公庫の廃止を控え、今こそ住宅政策をこの国の根幹として「全ての日本の家族のために良質な住宅と居住環境を提供する事」の実現を政府はすべき時に来た。

 ここに昔の家族の温もりが蘇り、核家族から本格的な二世帯住宅による新しい家族構成ができる。これは家庭教育においても年寄りが子供と接することによって、子供に人間的なスキンシップが生まれ日本の新しい一つのリズムがそこから生まれてくる。

 当局は、子供に贈与するなら贈与税を取ればいいという取れるところから取れ主義である。取らねば税収減になると考えているが決して税収減にはならない。そこの新しい大型消費が生まれることなのだ。今、必要なことは消費が生まれるような社会構造、経済構造を作る。その消費が次の消費を生んでいけば取りも直さず経済の活性化の道は必ず開け、将来の税増収になっていくことは明らかだ。税収確保が第一主義の発想からの脱却の時期にきているし、むしろ遅きに瀕した感さえある税制は単年度税収のバランスで考察すべきものではない。

 「減税」と「増税」が一体となった「増減一体」論の「税収中立」の思想から脱却しない限り、二一世紀の明るい日本の未来はない。



- 余話 -
 中国は世界の工場を標榜するプロパガンダで推進している。それらを含めて世界が大きく変わりつつある中で、日本は変わらないことによって現状の状況に陥ってしまっている。これは政治家に指導力がなさ過ぎる結果と思う。BSEやヤコブ病にしても海外で問題にされていた情報を役所はつかんでいたにも拘わらず放置し、対応ができなかった結果起きた明白因果である。事が起きればすぐに大臣が辞めれば納まる発想になる。これらは現大臣の責任ではなくて、それこそ10年前それ以前の役所の対応の問題なのであり、時の責任者や責任の所在をはっきりさせておく必要がある。

 民間企業であれば、こうした場合の責任体制ははっきりしてる。日本の官僚機構の一番悪いところは、その責任追求を常にあいまいにして逃れることにある。何かあれば大臣が辞めて物事が片付くではなく、時の大臣は辞めることなく遡って、それらの判断を下した役所機構の中の欠陥を是正していかなければ、今後も再び起きる可能性が大いにある。日本は役所の責任体制の欠陥を政治家が厳しく追求し、新しい体制を作ることが必要にせまられている。

 結果責任もケジメを付け新しいスタートには大事であるが、プロセス責任こそ組織の浄化であり、レールム・ノヴァルム(改革)である。プロセス責任体制(チェック機構)があれば大きな結果責任が生じる確立は少ない。「ステークホルダー社会」構築への民間チェック機構の創設が望まれる。

 小泉政権は43パーセントの支持率を得ている。国会は国権の最高機関で国の唯一の立法機関であり、行政権は内閣に属する。内閣総理大臣はそれを指示、監督する。誰でも理解している日本国憲法の一部である。内閣の最重要閣僚である財務相は総理大臣が政策を実現するに当たって最も信頼する人物を起用する。

 現時の様に戦後の最大倒産件数(昨年11月、今年2月)を更新している経済環境では税制改革は必要であり小泉内閣の重要案件である。総理大臣と財務大臣が一体となって改革を行うに当たって、どんな障害要因があるというのであろうか? 官僚(財務)や政府税調、自民税調という事であれば、総理大臣の指揮、監督が十分に発揮されていない事に他ならない。国民の半数が指示している内閣総理大臣に税制改革による景気浮上を是非お願いしたい次第である。
平成14年 WOODMIC 4月号より