内需の柱としての住宅政策を
住宅4団体 要望書を提出
非課税枠拡大など強く要請
                                               

 長引く不況で住宅着工の伸びが鈍化している。住宅産業の川上に位置し、住宅構造材など木材を加工する機械やプラントを製造する木工機械産業にも打撃となってあらわれている。こうした業界不信を打破すべく、このほど木材関連の業界団体である(社)全国木工機械工業会(宮川嘉郎会長)、全国木造住宅機械プレカット協会(齊藤陸郎会長)、日本機械鋸・刃物工業会(渡邊浩理事長)、全日本木工機械商業組合(前田静正理事長)は扇千景国土交通大臣に住宅税制の抜本的見直しを求める要望書「内需の柱としての住宅政策の提案」を提出した。

扇国土交通大臣に要望書を提出する原口博光全木機広報委員長(右から4人目)

 要望書のポイントは三つ。
 一つは生前贈与の非課税枠の拡大。二つ目は住宅ローン利子所得控除制度の創設。三つ目は住宅消費税の廃止。なかでも最も強い要望として出たのが、非課税枠の拡大である。三千万円に引き上げることで、世界レベルの金融資産が流動化し、デフレ対策などにつながるとしている。

 要望書を出した全国木工機械工業会の広報委員長で、日新興産(株)(東京都板橋区)の代表取締役社長の原口博光氏は、住宅税制の問題点をこう指摘する。

 「現在、住宅業界が脆弱なのは税制に問題があるから。アメリカでは、日本に比べて住宅購入における諸費用が軽減されている。景気の良い時でも住宅ローンの利子を所得控除にしている。そのうえで景気が悪化して公定歩合が低い時は、特別減税を実施する。日本のように景気が悪化した時だけ特別減税を実施すると、一時的に駆け込み需要はあるが、景気が回復すると一気に需要のギャップが広がってしまう」

 また、原口氏は個人消費の刺激には、生前贈与税の撤廃が効果的と言う。「先進諸国並に国民負担率を低める必要がある。まずは、税金確保主義に走る財務省の『官の論理』を改めるべき」と主張する。

 業界団体が要望書の提出に踏み切った背景には、木工業界の置かれた厳しい現状もある。製材機械、木工機械、合板機械および同付属品等の出荷額(工業統計表品目編)をみると、一九九〇年の二千億円弱から一九九八年には千百億円弱、二〇〇〇年には八百四十三億円へと年々減少し、一九九〇年に比べて半分以下となっている。先の全国木工機械工業会に所属する企業の数は、十年前の六十八社から四十社にまで減少している。

 原口氏は、住宅着工を刺激することで、関連産業への波及効果を強調する。「住宅建築のシナジー効果は計り知れない。一件家を建てるだけでも、木材、家具、セメント、アルミサッシ、ガラス、金物、厨房・洗面備品、電化製品、インテリア備品など、あらゆる産業が関係してくる。ある調査では投資一に対して一.四九五の乗数効果があり、公共投資の一.三四五より十ポイント以上もシナジーがあるという試算が出ている」
 
 同氏が社長を務める日新興産は、大手住宅メーカーに実績があるツーバイフォー住宅の加工機械設備の製造業者。レイアウトから設計、製作、納入、据付工事、アフターサービスまで一貫したエンジニアリングを行っている。「非課税枠の拡大により、二世帯住宅が増え、居住空間の質が向上するなど、家族を取り巻く環境も改善が望める」(原口氏)と相乗効果を期待する。

 十月三十日に決定した政府の総合デフレ対策には、税制改革の柱としての生前贈与を促す相続税・贈与税の見直しが盛り込まれた。最も強い要望としていた生前贈与の非課税枠拡大が実現の見通しとなったことで、今後の住宅産業の復調に向けた第一歩となることを期待したい。
以上 
掲載メディア
帝国タイムス 2002/11/15 (金曜日)