住宅の購入取得を目的とした生前贈与の非課税枠が三千五百万円に拡大、来年一月から実施される―。 政府はこのほど、自民党税制調査会(相沢英之会長)の調査などを経て二〇〇三年度の税制改革大綱を決定したが、 〇五年末までの時限措置とはいえ、五百五十万円が非課税枠の現行に比べて大幅な拡大となる。 経済への波及効果が大きい住宅投資を促すことが狙いだが、なんとその背景には、先に武部勤前農相や扇千景国交相などに要望書を提出した全国木工機械工業会(宮川嘉朗会長)らの懸命な陳情活動が奏功、税制をも動かしたようだ。 住宅建築の促進を柱とする住宅税制の基本的見直しを求めるため、全木機は七月の武部前農相、公明党の太田昭宏幹事長代理らに続き、九月にも関連四団体(※)連盟で扇千景国土交通相、経済産業省OBの原田義明自民党総務会副会長らへ、@生前贈与の非課税枠(現行五百五十万円)を三千万円に拡大A住宅ローン利子の所得控除制度の創設B住宅消費税の廃止―を強く求める要望書を提出。全木機では「これで本丸の国土、経産、農水など一連の陳情活動を終えた」(原口博光広報委員長)と受け止め、その後の政府対応に大きな期待を寄せていた。 しかし、「陳情活動は継続してこそ実を結ぶ」と同時に、そこには「大局観と志が必要」と考える原口広報委員長はまた、十一月にも再び武部議員を東京・永田町の個人事務所に訪ね、生前贈与の非課税枠拡大などを強く要請した。 武部議員は現在、自民党の政調筆頭副会長であり、同税調の幹部メンバーの一人。この住宅取得に限定した三千五百万円の生前贈与の非課税枠拡大決定について、秘書官の棚川史彦氏は「様々な業界や団体、また現場の要請が税制を動かした」と本誌の述べながらも、「ともかく理論立てて説明する原口氏らが一生懸命だったので、我々も元気付けられた。提出された要望書が非常に活きたし、関連四団体がまとまって行動したことも大きい」と指摘している また、公明党の太田議員も実現に向けて精力的に動いたようだ。「団体などの陳情は普通、要望書だけを提出してその後もなく終わってしまう」と、これまでの例を挙げた大久保智広秘書は、今回の全木機らの要望内容について「『子供達の教育にも絡む二世代住宅の建築には最低三千万円は必要』とする筋は通っているので、扇大臣も賛意を示していた」という。そして「太田議員も与党折衝前には財務省へ再三にわたって強く働きかけていたが、全木機らの要請が今回の税制改革に大きなウェイトを占めていたことは確か」と認めている。 現行の非課税枠五百五十万円から一挙に三千五百万円に引き上げられた住宅購入資金の贈与、このほかに住宅関連団体などの要請もあったようだが、何といっても全木機を中心とした数度に及ぶ陳情活動が大きく影響していたことは、両秘書官らの言葉からも明らか。やはり前述のように、陳情活動は形だけでなく、「大局観と志を持って継続してこそ実を結ぶ」ことを実証してみせたわけだ。 (※)全国木工機械工業界のほか、全日本木工機械商業組合(前田静正理事長)、全国木造住宅機械プレカット協会(斎藤陸郎会長)、日本機械鋸・刃物工業界(渡邊浩理事長)。 |
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掲載メディア 樹事報 2002/12/20 (金曜日) 発行所 木へン舎 |