インタビュー
衣住足りて住及ばず
日本の住宅税制に起因
昨年の新設住宅着工戸数は116万戸で前年比0.8%の増加となったが、住宅に関する不満はまだまだ多い。日本は衣・食については先進国のなかでもトップクラスだが、住については残念ながらいまだにアンカーだ。「これは日本の住宅税制に問題がある」と指摘するのは2×4機械メーカーである日新興産の原口博光社長。住宅税制の欠陥を指摘する原口社長は、社団法人全国木工機械工業会の広報委員長という立場から、生前贈与や住宅ローン減税などを内容とした要望書をこれまでに2回、国会議員に提出してきた。取引先である2×4プレカットメーカーの需要動向や日本の住宅税制はどうあるべきかなどを聞いた。 2×4工法の着工戸数については阪神大震災以降、9万6000戸から6万8000戸と急減したが、昨年は8万1000戸までに回復している。 2×4工法は耐震・耐火性能が高いということはデータとしても認められている。そうした住宅の生産部門を担う2×4部材メーカーを取引先としている当社としては、合理化、効率化、されには廃材や騒音といった環境問題も視野に入れた生産設備を供給することでサポートしている。 勝ち組といわれる企業は、常に使う立場に立ったものづくりができているところであり、取引先もそのあたりは非常によく研究している。 部材加工については合理化すべきところはまだまだ多い。当社は生産支援の一環として10数年前から2×4部材の木拾いパネルソフトの開発に取り組んできた。事務所のデータを現場のCAMに直結させるものであり、今年春にはさらにバージョンアップした新しいソフトも発表する予定だ。 図面を描くCADと生産工程に流すパネルカット支援ソフトを連結させることが、これからの流れとなるだろう。作業ミスをなくして、生産の高率もアップし、それによって材料の無駄も少なくなり、最終的には森林資材の有効利用につながると思う。 今年の住宅需要動向については、住宅ローン減税制度が1年延長となったが、基本的には個人所得に影響されるために現状の景気情勢では120万戸いくかどうかというところだろう。 言うまでもなく住宅が建築されることによって木材・建材はじめセメント・鉄・アルミサッシ・洗面備品・家具・電化製品、インテリア備品などあらゆる産業にシナジー効果がもたらされる。都市住宅学会の試算によると、住宅は投資1に対し1.495の乗数効果があるといわれ公共投資の1.345より10ポイントも高い。 また、住宅が10万戸増加すれば、26万人の雇用を創出するともいわれている。昨年後半から日本の景気が上向いたが、これは政府の景気対策の効果ではなく、米国の減税、低金利策の効果として日本のデジタル家電の対米輸出が主力になったからにほかならない。21世紀は、自然との共生、子孫から子孫へと住みよい地域を継承するために、環境整備の見地から公平で生活しやすい国民の立場に立った税制のあり方が検討されなければならない。 少子・高齢化社会を迎えるにあたって、お年寄りと子供がともに暮らす、温もりのある家庭の再構築、それには2世代・3世代住宅、高齢者向け住宅の整備が不可欠で、50年、100年といった長寿命かつ高品質な住宅ストックの形成を目指すべきである。環境保全を図るにあたって省エネ住宅など良質な住宅ストックは産廃廃棄物を削減、高品質な資材が住宅の耐久性を向上させ産業構造の変革をもたらす。 高齢化住宅の到来は快適な住宅と一体関係に位置する職場環境も改革しなければならない。 定年制度の改革により、退職するか延長するか本人に選択する自由を与え、シルバー世代の経験に培われた知恵の集積を若者に受け継いでいくことによってノウハウの断絶や流出を防ぐばかりでなく日本本来の年長者に対する儒教の精神を養う教育の場ともなる。 住宅産業の振興は、木材の需要拡大のほか広範囲の雇用創出ともなり製造業の空洞化も防ぐことにもなる。 こうしたことからわれわれ工業会は、木材加工機械や住宅団体と共同でこれまで2回にわたって関係国会議員に住宅政策関連税制についての要望書 (内容は@現行規模の住宅ローンの延長・拡充 A2戸目の住宅取得にも生前贈与の非課税枠、住宅ローン減税の適用 B住宅ローン利子所得控除制度の創設 C買い替えに伴う譲渡損失の繰越控除の拡充 D住宅消費税の廃止 )を提出してきた。 当初は、工業会1団体であったが、現在では建材業界団体も含めて6団体に増えている。広範囲な活動が必要で住宅関連団体にはもっと参加してほしいと思う。建ぺい率や借地権問題など住宅を取り巻く規制の緩和も国民にとって必要である。生活者の視点に立った税制改革が日本には欠けている。 現在の住宅減税を恒久減税と制度化すれば需要の流れが安定化し経済は良くなる。消費者が時限立法に左右されることなく購入時期を生涯設計のなかで自由に選定できるようになれば需要の安定につながる。時限立法が切れた時の需要の落ち込みは住宅業界にとって計り知れないものがある。 日本の従来のシステムは現在の減税規模を廃止したり縮小したりすることで税収減を防ごうとしてきたが、これはまったくの机上の論理であって結果的に税収を減らしてきた。 大事なことは国民の視点に立ち減税を行うことであってこれにより経済は活性化し、税収も上向くことになる。 |