各団体が一丸となっての改革 セーフティネット保証制度の業界浸透に向けて |
6月1日、中川大臣(右から2人目)の要望者を提出した(左から3番目が原口氏) |
六月一日、(社)全国木工機械工業会(宮川嘉朗会長)、全日本木工機械商業組合(前田静正理事長)、全国木造住宅機械プレカット協会(齋藤陸郎会長)、日本機械鋸・刃物工業会(鈴木寛善理事長)、全国建具組合連合会(越後一彦会長)、東京都家具工業組合(土居清理事長)、(社)国際家具産業振興会(小菅康正会長)、(社)全国家具工業連合会(長原實会長)の計八団体が連名となり中川経済産業大臣に「セーフティネット保障制度の弾力的運用及び保証制度の充実」についての要望書を提出した(写真)。 これは、業界不況にみまわれている家具・建具・木工機械メーカーといった各木工関連業者に対するセーフティネット保証制度の効力が、さまざまな理由から十分に発揮されておらず、各団体が一丸となって同制度の浸透を目指したことによるものだ。 今回は、その背景や木工業界の現状・問題点などについて、(社)全国木工機械工業会の理事・広報委員長および全日本木工機会商業組合の理事を務める”日新興産”(東京都板橋区)代表取締役社長の原口博光氏に話を聞いた。 ●自助努力を超えた厳しさ 木工業界に限らず、多くの中小企業が売り上げの落ち込み、地価下落による資産価値低下などから金融機関より(プロパー)融資を受けられず頭を抱えている。結局、そのなかの一部は市中金融などから超高金利融資を導入し、倒産に至ってしまう。最近では大手金融機関が積極的に中小企業への事業融資の推進をそているが、実際にそれらのパンフレットを見ると、とても金融機関が提示するとは思えない高金利の数字が並べられているものもある。確かにノンバンクかた調達するよりも安心感はあるかもしれないが、これでは本当の意味でその企業を手助けしていることにはなっていない。 このような実情を背景に、経済産業省所管のもと、資金繰り難に陥っている中小企業を救済する目的で「セーフティネット保証制度」が実施されているが、実際の現場においては、同制度の認定を受けたにも関わらず、融資が受けられない(木工関連の)中小企業が数多く見られるという。 「国内の木工関連業界」の経営再建については個々の企業努力という範疇を超え、自助努力ではどうにもならない状況にあると言えます。そのため、木工関連の各業種は、不況業種に指定されセーフティネット保証制度の保証対象業種になっているのですが、いざ制度を利用しようとすると、さまざまな理由で融資を断られたり、希望していた額の融資を受けられないなどの問題が生じています。」特定業種の指定基準が、最近三ヶ月間の月平均売上額が前年同期比で五%以上の減少が条件になっていますが、その程度の減少では自助努力によって経営改善できるはずです。逆説的に考察すれば、三十〜五十%ダウンといったこの制度を本来必要とする業種・企業に適用されていないという危惧があります」(原口氏)。 古来から日本人の生活に密着してきた木工製品。しかし、生活様式の変化や海外(廉価)製品の流入により国内における同製品の自給自足バランスは急速に崩壊。いつしか企業努力のみでの建て直しが困難な業種が多数発生するようになった。業種自体で敬遠されてしまうのだろうか、セーフティネット保証制度はあれど、申し込みをしてもなかなか前向きな審査結果が下りないのが現状。しかし、同業界としても、この矛盾した現状を黙って見ているわけにはいかなかった。同業の各団体が一丸となって業界の現状および融資制度の現状を直接国に訴えるとともに、相応の策を国に策を講じてもらうよう要請したのだ。 ●国会家具市場でも脅威の中国製品 二〇〇一年の国内家具出荷額は」、約一兆七十七四億円。この出荷額は、十年まえの九一年比で約四四%減となっており、同業界の置かれた現状の深刻さがそのまま反映されている。この要因としては、海外製品、特に中国製廉価製品の流通によるものが大きい。二〇〇三年に全世界から国内へ輸入した家具輸入総額(木製家具と金属製家具の合計額)は、約二千六百五十七億で九九年以降の四年間で約三一%増となっている。そして」、中国からの家具輸入額だが、九九年には約三百六十億円であったのが二〇〇三年には約千四十七億円(全輸入額の約四〇%)と、四年間で約三倍にも膨れ上がっている(表参照)。 <参考データ> 帝国データバンク調べによる家具・建具業者の倒産件数推移(表参照)をみると、近年のピークは二〇〇〇年の百三十九件(内訳・木製家具製造業八十一件、金属家具製造業十三件、建具製造業四十五件)。二〇〇二年には八十三件と一時的に百件割れとなったものの、二〇〇三年には再び百件の大台に載った。今後、再び増加傾向に向かうのか懸念される。 |
●動かなければ何もはじまらない 「各産業を画一的のとらえ、グローバルスタンダード(世界標準)のもとに業界再編を図ろうとすることで、あらゆる産業に悪影響を及ぼしていると感じています。連名団体を徐々に増やし、今後も各団体が手を結んで諸問題を国に要請していくことで、すこしずつでも木工業界の活性化を実現できると考えています。 上業企業をはじめとする大手企業の業績回復のニュースなどを背景に国内全体の倒産件数も減少傾向に向かっているものの「各支店から返済条件変更要請が相次いでいる」(某信用金庫審査担当)といったように、ギリギリのところで踏ん張っている中小企業は依然として多い。 経営者として何の身動きもとらず、自社の終焉を待っていてはならない。今回紹介した八団体のように問題点を提議、そして結束して国に改善を要請する動きをみせることは業界不況に悩む他業種にとっても勇気付けられる明るい話題である。ぜひ、こうした活動の成果を実らせ一日もはやく業界全体の活性化につなげて欲しい。 |