《 展望 》 |
内需の柱としての住宅政策の提案 |
社団法人 全国木工機械工業会 |
(社)全国木工機械工業会では、平成14年から毎年、内需拡大の大黒柱である住宅産業の活性化を図り、合わせて木材加工機械の需要拡大にも反映させようと、原口広報委員長が中心となり取りまとめた「内需の柱としての受託政策の提案」を、税制改正に関する要望書として各団体の賛同を経て、関係者へ要望してきております。 今回6回目となる平成20年度税制改正に関する要望書については、全日本木工機械商業組合(理事長 上阪太一)、全国木造住宅機械プレカット協会(会長 齋藤陸郎)、日本機械鋸・刃物工業会(理事長 鈴木寛善)、全国建具組合連合会(会長 上中節彦)、東京都家具工業組合(理事長 土井 清)、(社)全国家具工業連合会(会長 長原 實)、(社)国際家具産業振興会 会長 小菅 康正、(社)全国木材組合連合会(会長 庄司 橙太郎)、日本合板工業組合連合会(会長 井上篤博)、日本集成材工業協同組合(理事長 細田安治)、日本繊維板工業会(会長 井邉博行)、今回新たに加わった日本合板商業組合(理事長 吉田 繁)、日本木材住宅耐震補強事業者協同組合(小野秀男)と 工業会の14団体連名で、平成19年12月21日に宮川会長、廣田副会長、原口広報委員長、宮内専務理事、平野副理事長(全日本木工機械商業組合)、涌田専務理事(日本繊維板工業会)ら6名が冬柴鐵三国土交通大臣(衆議院議員)、原田義昭衆議院財務金融委員長を個別に訪れ、要望書を直接手渡すとともに今回の要望に至った経緯と、需要業界をはじめとする木材産業全般の窮状について説明した。 この要望書では、@改正建築基準法の施行による建築確認申請の査定遅延により悪影響を被った住宅建築資材及び木材加工機械産業への優遇税制の創設、A地球温暖化防止(CO2削減)業種への優遇税制の創設、B住宅消費税の廃止、C住宅ローン利子所得控除制度の創設、D新耐震以前の住宅の建替え・耐震改修工事を促進する優遇措置の創設、E不動産の登録免許税、不動産取得税の軽減措置の延長、恒久税化、F買い換えに伴う譲渡損失の繰越控除の拡充、G買い換えに伴う譲渡所得の課税軽減、H住み替えに伴う残存住宅ローン繰越控除、I二戸目の住宅取得にも生前贈与の非課税枠適用、J法人の負担軽減の11項目を「内需の柱としての住宅政策」として提案しました。また、合わせて「経済の活性化への提案」として、@改正建築基準法施行に起因する建築確認申請の審査遅延により、多大な損害を被った建築関連業種である住宅建築資材産業及び木材加工機械業界に信用保証協会の弾力的運用、A中小企業への活力融資の拡大、担保価値の充実(担保価値の正当な評価)、Bエネルギーの安定確保の3項目を要望いたしました。 工業会としては、今後も木材関係業界振興のため、積極的な活動を行っていくことにしております。 |
冬柴鐵三国土交通大臣 (12月19日) | 和泉洋国土交通省住宅局長 太田昭宏公明党代表 | |
武部 勤自由民主党元幹事長 | 原田義昭衆議院財務金融委員長 | |
太田昭宏公明党代表 (同) |
平成19年12月7日 | |
国土交通大臣 参議院議員 冬 柴 鐵 三 殿 |
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要 望 書 |
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(社)全国木工機械工業会 会 長 宮 川 嘉 朗 |
全日本木工機械商業組合 理事長 上 阪 太 一 |
全国木造住宅機械プレカット協会 会 長 齋 藤 陸 郎 |
日本機械鋸・刃物工業会 理事長 鈴 木 寛 善 |
全国建具組合連合会 会 長 上 中 節 彦 |
東京都家具工業組合 理事長 土 井 清 |
全国家具工業連合会 会 長 長 原 實 |
(社)国際家具産業振興会 会 長 小 菅 康 正 |
(社)全国木材組合連合会 会 長 庄 司 橙太郎 |
日本合板工業組合連合会 会 長 井 上 篤 博 |
日本集成材工業協同組合 理事長 細 田 安 治 |
日本繊維板工業会 会 長 井 邉 博 行 |
日本合板商業組合 会 長 吉 田 繁 |
日本木材住宅耐震補強事業者協同組合 会 長 小 野 秀 男 |
平成19年12月7日 | |
要 望 書 |
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第21回参議院議員選挙が2007年7月29日行われた。 与党・自民党37議席、公明党9議席、野党・民主党60議席、非改選との合計 自民83、公明20、民主109。 参議院で自民党は大敗し、民主党が第一党になり、与野党逆転による「ねじれ国会」という事態が出現しました。 来年度予算案や関連法案の行方は波乱含みである。 二院制の国で、両院が同等の不自然な多数を持った場合、両院が相互に協力しなければ、政(マツリゴト)は成されない。 人の業の最上位である政を司る政治家の存在の有無に関わる事になる。 現在の状況が、民主党の実績による勝利ではなく、自民党の自己崩壊によるものである事を民主党が自覚しなければ、政治は暴走する。 9月25日第91代首相に自民党の福田康夫総裁が選出されました。 憲政史上初となる親子二代の首相が誕生しました。 若さと経験不足が露呈した前内閣から、高齢化社会の日本のシンボルとして、経験、安定感、調整力のある71歳の福田首相の「背水の陣」内閣が「希望と安心の国づくり」を目指して始動しました。 米国では、信用力の低い個人向け住宅融資(サブプライム住宅ローン)問題を発端とする金融不安や景気減速への懸念の救済策として、バーナンキFRB議長が追加利下げを発表し、ブッシュ大統領も借り手を救済することを柱とする包括対策を表明した。 我国では、平成18年の新設住宅着工戸数は1,285,246戸、前年度比では2.9%増、4年連続の増加となり、平成9年度以降最大になった。 平成19年6月20日、耐震偽装の再発防止を目的とする「改正建築基準法」が施行された。 しかしながら、建築確認申請の大幅な審査遅延によって、新設住宅着工戸数は7月前年同月比23%減、8月は約43%と急減する事となった。 住宅建設の大幅な減少は木材産業業界のみならず広範囲の産業に多大な影響を及ぼす。 この様な新しい施策を導入する場合はそれに先立ち、範囲や時期を区切って試行し、効果を科学的・客観的に検証する「社会実験」の手法が取り入れなければならない。 官僚は行政の各分野の専門家であるが、意思決定を行う主体ではない、政治家がその情報の真偽、軽重を判断し、民主的政治プロセスとして、行政に生かすステークホルダーシステムの運用が重要である。 現時の国会は検討すべき重要案件より、政治家の宴会問題、一円領収書問題、等々に貴重な審議時間が浪費されている。 国民が問題視しない重箱の隅を突く論争を政治家が永遠と繰返しているのである。 国家観に基づいた政策を実行できる志ある政治家が必要である。 グローバル化によって物質的利益を重んじる価値観が増大し、人間性や環境を大切にする価値観が蔑ろにされている。 先進国の利益を増大させるシステムが採用される危険性を内在している。 市場原理の飽く無きなき追求は「神の見えざる手」の差配を遥かに超える。 政府が適切な規制と介入を行う事によって、市場の経済効率の向上が成される。 物理的・制度的インフラという環境は政府の大きな役割である。 経済成長と環境対応、社会福祉の三者一体となった総合的判断が政治のリーダーシップに求められる。 住宅の平均寿命は日本:30年、米国:44年、英国:75年である。 住宅長寿化の税優遇が速急に図られなければならない。 住宅先進国の英国で、ブラウン新首相の第一の公約は住宅関連予算の増額である。 住宅関連予算のGDPの占める比率は先進諸国中英国が最も高い。 英国では、内需主導の牽引役は裾野の広い社会資本であり、経済への波及効果の最も大きい住宅である事を歴史から学んでいるのである。 残念ながら、日本は最も低く、内需主導の成長に転換するに当って、住宅関連予算の拡大は最重要な政策である。 「美しい国、日本」の再構築に向けて 2006年9月26日、第90代内閣総理大臣に安倍普三氏が選出されました。 時を一にして、公明党代表に太田昭宏氏が就任し、与党の新党首が揃って誕生、新しい国づくりに向けてスタートしました。 「官から民へ」を標榜し、実行した小泉内閣の行政改革、民営化によって、財政投融資を消滅させ、小泉構造改革は成果を上げました。 旧体制は徐々に崩壊し、「簡素で効率的な政府」へ歩を進め、政策形成過程に於いて「政・官・学・経」の有機的連携を以って、行政主導の政治に埋没する事なく、P・D・C・A(計画・行動・点検・改善)のシステムを確立する統治へと民の意向に主題が置かれ始めました。 グローバル化によって平成11年金融庁が作成した査定マニュアル(スコアリングモデル)の基、銀行に企業の保証審査基準を指導しました。 日本経済に於いて、金融機関の役割は産業育成の見地から個々の企業の選別を現場に根ざした情報収集により融資を行い、企業を補完し、共に発展してまいりました。 しかしながら、この制度の導入により、我が国独自の伝統に培われた企業文化の多くが市場から葬られました。 企業の社会的責任(CSR)、社会的有用性、無形の資産はスコアリングモデルでは評価できません。 この制度の弾力的、柔軟な運用と再チャレンジ推進施策の実行が望まれます。 「中小企業政策」は日本独自の汗と血の文化の礎です。 画一化する社会にあって「弱者への愛情」、「慈愛」、「誠実」、「正義」、「忍耐」、「惻隠」等々日本人が古来から美徳としてきた「普遍的価値」をまず第一に「家庭」に取り戻しましょう。 「家族愛」、「郷土愛」、「祖国愛」が「美しい国、日本」の風土になるのではないでしょうか。 「教育崩壊」も「家庭」と「学校」が一体に成って取組む問題だと思います。 そして、その底流にあるのは日本人の「卑怯を憎む心」、「恥」を知る精神構造にあるのです。 失われた10年からの脱出に当って 2005年は1998年7月から下落した景気がマイナスから脱したことで、所得税と個人住民税の定率減税を2007年には全廃する方針が打ち出された。 景気回復は民間部門のコスト削減、不良債権整理などのリストラによる企業体質の改善に基づく利潤の増加であり、技術革新による生産性向上を持続させる端緒を見出したに過ぎない。 郵政改革が象徴するが如く「官から民へ」の資源移動の第一歩が始まったばかりであり、非効率な政府部門の改革が多々あり「市場化テスト法」の制定が急がれる。 財政再建という大義の下に国民の減税措置を整理・縮小するに当たって、それ以前に歳出削減により財政健全化を徹底させなければならない。 現時点の財政収支の改善は経済成長率を押上げる観点から成されなければ再建が阻害される要素に成りうるであろう。 増税が連続的に実施されれば失われた10年が生かされる事なく、国民生活を圧迫し、活力ある日本に向けてスタートラインについた矢先に失速する危惧さえある。 税制改革は直間比率の見直しが必要であり、消費税率引き上げは生鮮食品の0〜3%の軽減税率、子育て減税や住宅消費税の撤廃を併せて行なわなければG・D・Pは大幅に縮小する事になるであろう。 社会保障費の目的税化もその範囲によっては、社会保障費の歳出削減を硬直化させる虞もあるであろう。 社会保障と密接に関係する高齢者の定義は国連が約50年前に提唱した時代から、10歳以上平均寿命も長くなっている。 2050年の高齢者割合(65歳以上)は39%、75歳以上に換算すると23.5%に下がる(国立社会保障・人口問題研究所)。 元気で意欲あるシルバー世代を「壮年」と位置付け、その知恵の集積が社会活性化に貢献できるオールラウンドの社会構成が望まれる。 住宅および住環境の社会インフラ整備 我国にとって、2004年の大型台風による広範囲におよぶ河川の増水・氾濫と土砂災害は過去に例を見ないほど甚大にして壊滅的であった。 そして、同10月、日本列島を縦断した台風に前後して、震度7の地震が新潟中越地方に発生した。 社会資本の整備は台風、地震国として、国民の安全性、防災性・耐震性の見地から税制の優遇があってしかるべきである。 新耐震基準以前に建築された住宅の建替え・リフォーム等の促進や2002年8月からスタートした住宅性能表示制度の充実・普及によって、耐震・耐火・耐久・省エネ性の住宅建設促進が徹底されなければならない。 阪神・淡路大震災、新潟中越地震の倒壊住宅は新耐震基準以前に建設されたもので、住宅ストックの約1/2・2,100万戸(平成10年住宅・土地統計調査)が安全で安心な住宅および住環境の社会インフラの整備として国家的課題であろう。 住宅関係予算総額のGDPに占める比率は、イギリス 1.48%、フランス 0.7%、アメリカ 0.34%、ドイツ 0.22%、日本 0.18%と先進諸国中日本が最も低い。良質な住宅ストックを有する欧米諸国に於いても、住宅政策に重点が置かれている。 財政再建の大義の下に、国民にとって生活の基盤を成す「住宅」政策が軽減されるような事があってはならない。 我国の人口増加率は 0.11%と先進諸国と比較しても最も低く、出生率の低下スピードが速く、現在の年金制度、勤労者世代と高齢者世代のバランスは完全に崩壊している。 少子・高齢化時代を迎えるに当って、現在15才以上65才未満の生産年齢人口を70才未満とする新しい雇用体系に移行し、年金支給年度を65才に引上げ、シニアの社会的役割の増大を図らなければならない。 子育て支援、労働観(フリーター)、家族観、人生観に果たすシニア世代の役割は重要である。 少子・高齢化社会の到来 21世紀は自然との共生(山と海)、子孫から子孫へと住み良い地球を承継する為に、環境整備の見地から公平で生活し易い国民の立場に立った税制のあり方が検討されなければならない。 少子・高齢化社会を迎えるに当って、お年寄りと子供が共に暮らす、温もりのある家庭の再構築、それには二世代・三世代住宅、高齢者向け住宅の整備が不可欠で、50年、100年といった長寿命かつ高品質な住宅ストックの形成を目指すべきである。 環境保全を図るに当って、省エネ住宅など良質な住宅ストックは産業廃棄物を削減し、高品質な資材が住宅の耐久性を向上させ、産業構造の変革をもたらします。 高齢化社会の到来は快適な住宅と一体関係に位置する職場環境も改革しなければなりません。 定年制度の改革により、退職するか延長するか本人に選択する自由を与え、シルバー世代の経験に培われた知恵の集積を若者に受け継いでいく事によって、ノウハウの断絶や流出を防ぐばかりでなく、日本本来の年長者に対する儒教の精神も養う教育の場ともなります。 高齢者の目的意識が生甲斐となり、経済を活性化させ、日本を明るく活力とゆとりある社会にします。 国の基盤に関する税制 古代より日本は、「木」と「水」の里として、永々と営んでまいりました。 日々の暮しの中で「木」は憩と癒を私達に与えてくれます。 木材産業は、住宅産業と一体の関係に位置し、木造住宅・家具・建具は環境問題の見地からも自然の営みに沿った産業であります。 住宅産業の振興は、木材の量的需要拡大につながり、広範囲の雇用の創出と製造業の空洞化を防ぎます。 住環境から見た日本は決して豊かな国ではありません。 平和産業の要として内需拡大と豊かな国民生活を築く事が21世紀の日本の使命と心得ます。 住宅建築は、木材、建材、家具、セメント、鉄、アルミサッシ、ガラス、金物、厨房・洗面備品、電化製品、インテリア備品等々あらゆる産業にシナジー効果をもたらします。 都市住宅学会の試算によりますと、住宅は投資1に対して1.495の乗数効果があり、公共投資の1.345より10ポイント以上もシナジーがあります。 住宅が10万戸増加すれば、26万人の雇用が創出されます。 現行の住宅減税の様に、景気を一時的に刺激する時限的政策では、国民の購買時期の選択肢を狂わせ、強いては日本経済全般にとっても、足腰の弱い政策となります。 期間が限定されている面で、控除期間終了後の経済環境に悪影響を及ぼします。 住宅という国民すべての「夢の実現」を達成する、国の基盤に関する税制とする認識が大事であります。 『すべての日本の家族のために良質な住宅と居住環境を提供すること』の目標のもと、長期の視点にたった「住宅税制」に改革しなくてはなりません。 |
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―内需の柱としての住宅政策の提案― |
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―経済の活性化への提案― |
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