インタビュー

 全国木工機械工業会など木材関連産業団体が、公共建築物の木造化などを内容とした要望書を政府関係者に提出し姶めて今年で9年目となる。こうした陳情活動は自民党から民主党に政権が変わった昨年も行われた。要望書の作成から関係官庁との調整などの活動を裏で支えてきた全国木工機械工業会の副会長で広報委員長でもある原口博光氏にこれまでの歩み、これからの展開などを聞いた。
全国木工機械工業会
広報委員長
原口 博光氏

国民の視点から政策提案
公共建築物の木造化など訴え9年目


 陳情活動は02年から毎年行っており、今年で9年目となる。昨年12月8日に行った陳情では民主党の細野豪志副幹事長を訪問し、小沢一郎幹事長あての要望書を手渡した。要望書の内容は、農林水産省関連が8項目、国土交通省関連が7項目の合計15項目。

 農林水産省関連では公共建築物の木造化の一層の推進、森林バイオマスの利用。国土交通省関連では新耐震基準以前に建築された住宅の建て替えに関する減税措置や住宅消費税の廃止などが主な内容となっている。我々の 団体は経団連のように献金しているわけでも なく国民の視点に立った要望内容であり、今後も問題解決のためには積極的に政策提案を行っていくつもりだ。 政権がこれまでの自民党から民主党に変わって初めての陳情だった がきちんと対応しても らった。

住宅政策が要望の柱

 要望の柱は、木材関連産業では関連の深い住宅政策である。我が 国の住宅に関する総予算はGDP比では先進国のなかで最も低く、英国に比べると約10分の1である。予算が少なけれほ住宅の振興はそれだけなされないわけで、国民のために何かをするのが政治の役割とするならば今の住宅政策には大きな欠陥がある。その際たるものが95年に発生した阪神大震災後の対応。

 死傷者の8割近くが家屋の倒壊によって引き起こされた惨事を二度と繰り返さない政策が望まれる。倒壊した 家屋のほとんどが新耐震基準以前の耐震性の低い古い合法木造住宅によるもの。補助金をつけるとか特別なローン減税によって国家と して安全、安心の社会資本整備の見地から積極的に建て替えを推進すれば長期的な雇用と内需拡大に貢献する。

 82年の新耐震基準以前に建てられた住宅が1300万棟ぐらい残っているとすれば災害が発生したとしても被害は想定できる。

新政権に望むこと

 鳩山内閣は、CO2削減というテーマを掲げている。木造住宅はコンクリートに比べて温室効果ガスは31%、 鉄骨に比べても26%少ないことが、LCAに取り組んできた服部東京農工大学教授の研究からも明らかになっている。国は公共建築物を木造化することでCO2をさらに削減することができるわけで、赤松農林大臣の発言どおりこれについては大幅に前進した。

 住宅消費税についても、先進国のなかでこの税があるのは我が国だけだ。米国にも当初はあったが、廃止したら可処分所得が増え、関連商品に波及し、消費税以上に税収が増えたという例もある。政官経のしがらみのない、 癒着のない新しい政権ではそういうことに挑戦してほしい。

 住宅ローン控除も購入者にとっては負担が軽減されることになる。それによって可処分所得が増えればほかの消費に回るわけで、民主党には4年間の政権のなかでぜひ取り組 んでほしい。

 2×4コンポーネント工場についても国産材と同じような補助金を出すことを要望書のなかに盛り込んだ。2×4工場は、補助金がないために機械化は非常に遅れており、加工は海外に依存してしまっている。生産設備に補助金を出すことによ って製造業者は国内回帰を図り雇用の増大にもつながる。特に輪入ランバー価格はオープ ンで、工賃の利益では 最新のCAD/CAM 設備は購入できない。自助努力の範囲を超えており、そうしたことを何とかするのが政治の役割だろう。

 軸組在来工法の加工精度の向上に貢献したCAD/CAM化も一企業の資金によって賄うことは難しく、補助制度によって近代化がなされた。税の公平の諭理からも新政権の早急な対応が望まれる。

 最後になるが、民主党幹事長室によると、木材関連産業の陳情は初めてということだったが、公共建築物の木造化やバイオマスの取り組みには大きな成果があった。
日刊木材新聞 平成22年2月5日
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