≪展望≫ |
要望書「木材資源のマテリアル利用優先社会に関する要望書」
並びに「景気対応緊急保証制度融資審査について」の提出
社団法人 全国本工機械工業会
|
資源エネルギー庁では「再生可能エネルギーの全量買取に関するプロジェクトチーム」を立ち上げ、再生可能エネルギーの全量買取制度のあり方について検討しているが、そこで間伐材、建築廃材など未利用・再生可能な木材資源のバイオマス発電が強力に推進されようとしている。これが具体化すれば、木材のマテリアル利用を阻害することになり、木材産業にとって大きな問題となることは明らかである。
このような現状を鑑みて、木材資源の効果的な利用について早急にアピールすることが必要であるため、涌田良一専務理事(日本繊維板工業会)、二瓶啓常務理事(日本製紙連合会)と原口博光広報委員長が中心となって取り纏めた「木材資源のマテリアル利用優先社会に関する要望書」を工業会を含め12団体の連名の要望書として、平成22年2月19日に服部順昭会長及び太田正光理事・前会長(日本木材学会)、二瓶啓常務理事及び上河潔常務理事(日本製紙連合会)、涌田良一専務理事(日本繊維板工業会)、原口博光副会長(㈱全国木工機械工業会)ら6名が衆議院会館に一川保夫民主党副幹事長(衆議院議員)を訪ね、直接手渡すとともに今回の要望に至った経緯と、需要業界をはじめとする木材産業全般の窮状について説明した。
その後、3月8日に上記6名が農林水産省に佐々木隆博農林水産大臣政務官を訪ね、同様に説明した。
なお、提出した要望書は次のとおりである。 |
|
|
|
|
写真1 一川保夫(衆議院議員)民主党副幹事長
(2月19日) |
|
写算2 佐々木隆博(衆議院議員)農林水産大臣政
務官(3月8日) |
|
|
|
写真3 吉田おさむ(衆議院議員)民主党副幹事長
(5月17日) |
|
写真4 高橋千秋(参議院議員)経済産業省政務官
(5月18日) |
|
|
平成22年2月19日 |
民主党幹事長
衆議院議員
小 沢 一 郎 殿 |
|
要 望 書 |
|
日本製紙連合会
会 長 芳 賀 義 雄
日本合板工業組合連合会
会 長 井 上 篤 博
(社)全国木工機械工業会
会 長 橋 本 恭 典
日本機械鋸・刃物工業会
理事長 庄 子 公 侑
東京都家具工業組合
理事長 土 井 清
(社)日本家具工業連合会
会 長 北 村 斉 |
日本繊維板工業会
会 長 井 邉 博 行
日本合板商業組合
理事長 吉 田 繁
全日本木工機械商業組合
理事長 福 本 豊 彦
全国建具組合遵合会
会 長 上 中 節 彦
(社)国際家具産業振興会
会 長 加 藤 知 成
日本木造住宅耐震補強事業者協同組合
理事長 小 野 秀 男 |
|
|
|
|
|
木材資源のマテリアル利用優先社会を!
|
わが国は、循環型社会、低炭素化社会を目指しております。
循環型社会(繰り返し活用する)、低炭素化社会(炭素を長く製品に保持させる)で必要とされるのは、資源をカスケード型に利用することであります。即ち、木材資源は、最初大きなブロック(柱、土台や合板等として住宅や家具に活用)として、更にそれらに適用できないものはチップとして紙や繊維板に活用しております。柱や土台や家具としての役割が終わったモノは、回収されチップとして再び紙・板紙や繊維板になり再び梱包材や家具へと、段階的に活用され、活用の終わったものは燃料となってきました。
昨今の原油高騰と地球温暖化対策を目的とした政策誘導によって、木質資源の燃料利用が急激に増大しています。
わが国は、ポスト京都議定書に関する国際会議の場において炭酸ガスを1990年比で25%削減することを国際的に公言しています。その実現のための諸施策の一つとして、現在、政府によって電力会社による再生可能エネルギー全量買取り制度が検討されております。
このための手段として、間伐材、建築廃材など未利用・再利用可能な木材資源の石炭混焼によるバイオマス発電が強力に推進されようとしています。未利用・再利用可能な木材資源をエネルギー利用すること自体は、CO2吸収源である森林の維持・再生や、地球温暖化の防止に大きく貢献することであり、木材産業関係者としても支持するところです。ただし、電力料金によってコストを国民に転嫁できる電力会社が、妥当な限度以上に高い価格で間伐材、建築廃材などを購入するようなことになれば、本来、建築資材、紙などのマテリアル利用に用いられてきた木材資源までがエネルギー利用に用いられることになります。これによって、わが国の木材資源の健全なカスケード利用が阻害されるともに、わが国の木材のマテリアル利用を支えてきた紙・パルプ・紙加工業界・木材業界が大きな打撃を受けることになってしまいます。
木材を従来からマテリアルとして活用してきた産業の裾野は広く、悪影響は計り知れないものが有ります。
そこで、木材資源のマテリアル利用を優先する政策に就いて特段のご配慮を御願い致します。 |
|
要 望 事 項 |
|
1.木材のマテリアル利用を優先する政策を実施していただきたい。
- 昨年成立した「バイオマス活用推進基本法」では、第八条に「バイオマスの活用の推進は、まずバイオマスが製品の原材料として利用され、最終的にエネルギー源として利用されるなど、…」とマテリアル利用の優先性を明示しております。
2.木材をマテリアルとして利用する業界を大切にしていただきたい。
- 木材をマテリアルとして活用している産業は、市場規模 22兆円、従業員71万人程度になると推測されます。紙・パルプ・紙加工業界、家具業界、合板業界、繊維板業界、集成材業界、印刷出版業界等長い歴史の業界が多く、更に、関連する業界として住宅産業界、木工機械業界等関連業界の広がりも大きいものがあります。
3.「再生可能エネルギー全量買取り制度」の内、バイオマス発電は上記1、2を踏まえ慎重に願います。
- ヨーロッパでも同様の現象が起こり、紙・パルプ・紙加工業界・木材業界が、マテリアル利用優先をEUに要望しております。 (木材のエネルギー利用により、マテリアルの高騰を引き起こし、材料の入手が困難となっております。)
|
|
|
|
また、現下の厳しい経済環境における中小企業の金融面のセーフティネットとして、景気対応緊急保証制度が設けられたが、融賢申請の際に行われる審査は金融監督庁が導入したキャシュフローを中核とする検査マニュアル(金融スコアリングモデル)を基に作成された基準によっているため、中小企業の内部に蓄積された「無形の資産」が審査に反映されず、同保証制度が十分に機能していない。
そのため、審査方法の抜本的な改革が求められていることから、原口広報委員長が中心となって要望書「景気対応緊急保証制度融資審査について」を取り纏め、工業会を含め10団体の連名で、平成22年5月6日付で民主党・小沢幹事長あてに提出するとともに、17日には原口博光副会長((社)全国木工機械工業会)、川喜多進専務理事(日本合板工業組合連合会)涌田良一専務理事(日本繊維板工業会)が衆議院会館に吉田おさむ民主党副幹事長(衆議院議員)を、翌18日には橋本恭典会長、原ロ博光副会長、内藤博光専務理事(㈱全国木工機械工業会)、涌田良一専務理事(日本繊維板工業会)が経済産業替に高橋干秋経済産業省政務官(参議院議員)を訪ね、要望書を直接手渡すとともに今回の要望に至った経緯と、需要業界をはじめとする木材産業全般の窮状について説明した。
なお、提出した要望書は次のとおりである。 |
|
平成22年5月6日 |
民主党幹事長
衆議院議員
小 沢 一 郎 殿 |
|
要 望 書 |
|
(社)全国木工機械工業会
会 長 橋 本 恭 典
日本合板商業組合
理事長 吉 田 繁
日本機械鋸・刃物工業会
理事長 庄 子 公 侑
全国建具組合連合会
会 長 上 申 節 彦
東京都家具工業組合
理事長 土 井 清 |
日本合板工業組合連合会
会 長 井 上 篤 博
日本繊維板工業会
会 長 井 邊 博 行
日本木造住宅耐震補強事業者協同組合
理事長 小 野 秀 男
(社)国際家具産業振興会
会 長 加 藤 知 成
全日本木工機械商業組合
理事長 福 本 豊 彦 |
|
|
|
|
|
|
景気対応緊急保証制度融資審査について |
|
硬直化した融資審査の抜本的改革
- 三年以上の取引関係がある金融機関が融資甲請企業の審査を行い、保証協会はその査定を行うに当り、企業訪間、経営者と面談し「過去・現在・未来」について、経営理念、企業の社会的責任に基づき査定し、融資額並びに実行の可否を行うものとする。
現在金融機関は認定企業の申請窓ロとして機能しているが、審査基準の測定に関して、当事者能力を有していない。
審査は保証協会が外部格付機関に委託している。
この制度は平戌11年、金融監督庁が竹中平蔵長官の下、導入した検査マニュアルによってソフト化されたものである。
元来、銀行の債権判定基準として、査定された基準が中小企業への融資審査として、スコアリングモデルのソフト化へ、格付機関のツールとなり、保証協会の融資審査の根幹となったものである。
この様なシステムは多民族国家・アメリカの画一的効率的基準が物差しとして必要とされる土壌から生まれたものである。
目本に於いては、地域に密着した金融機関が財務上の利益(決算書)以外のCSR(企業の社会的責任)を通して、種々の情報(経営者の理念・人格)によって、企業の実力や社会的ニーズへの取組を測定し、融資を行い、共に成長してきた企業風土がある。
市場との信頼に基づく製品開発への融資や、顧客を大事にする製品満足度、安心感を長期的に維持し、信用に応える技術、品質やサービスへの信頼性を担保する企業に融資する風土が金融機関と中小企業の日本的経営の根幹にあった。
しかるに、この善なる風土は平成11年以降、金融監督庁のスコアリングモデルの導入によってソフト化され、機械的に企業価値が審査される事になってしまった。
企業やその製品が市場で培ってきた「過去・現在・未来」の価値を評価し、企業の価値を測定する社会的融資は格付機関のソフトで審査する事は不可能である。
「無形の資産」は保証協会の外部委託によって、ソフト化されたシステムで硬直的に審査するものではない。
グローバル化した市場に於いて、資金を市場から有利且つ白由に低金利で調達できる大企業と資金繰りを保証協会に依存する中小企業とは全く異なる風土がある。
事業所比率99.7%、従業員比率70%の中小企業が研究、開発、生産する基盤に対する融資制度(保証協会)は余りにも脆弱であり、抜本的改革が必要である。
グローバル市場では海外企業(国営企業)の標的はキャシュフローの乏しい「無形の資産」のある日本の風土が育んだ企業である。
内需拡大と雇用確保の見地に於いても、政府は健全な中小企業の育成に積極的に取組まなくては、企業文化・風格・互助の精神・無形なるものを育て、大事にする風土が風化してしまう。
御検討の程、御願い申し上げ、併せて採用されん事を切望致します。
|
以上
|
|
|
木工機械 No211 2010年 8月号掲載
|
|