木材関連産業10団体が要望書を提出

「内需の柱としての住宅政策及び林業・木材関連産業政策の提案」




平成23年9月21日 国会
右から、日本合板工業組合連合会 専務理事 川喜多 進氏
民主党企業団体対策委員長(前国土交通副大臣)参議院議員 池口 修次氏
民主党政調会長代理(元国交副大臣)衆議院議員 三井 辨雄氏
民主党副幹事長農水担当(前農水副大臣)衆議院議員 篠原 考氏
社団法人全国木工機械工業会 副会長広報委員長 原口 博光氏
日本繊維板工業会 専務理事 瀧川 充朗氏
社団法人全国木工機械工業会 専務理事 雨宮 禮一氏
平成23年9月26日 農水省政務官室
右から、社団法人全国木工機械工業会 専務理事 雨宮 禮一氏
日本合板商業組合 事務局長 伊藤 洋一氏
社団法人全国木工機械工業会 副会長広報委員長 原口 博光氏
農林水産大臣政務官 衆議院議員 森本 哲夫氏
日本合板工業組合連合会 専務理事 川喜多 進氏
日本繊維板工業会 専務理事 瀧川 充朗氏
平成23年9月28日 衆議院会館
自民党元幹事長 衆議院議員 武部 勤氏
平成23年9月28日 衆議院会館
自民党元経済産業大臣 衆議院議員 二階 俊博氏
平成23年9月26日 衆議院会館
公明党政調会副会長農水部会長(元農水副大臣)
衆議院議員 石田 祝稔氏(右から2人目)
公明党議長 太田 昭宏(右から3人目)
平成23年9月28日 砂防会館
右から、全日本木工機械商業組合 事務局長 安塚 公紀氏
自民党元金融財務委員長 前衆議院議員 原田 義昭氏




-内需の柱としての住宅政策及び
林業・木材関連産業政策の提案-



 はじめに、東日本大震災の被災者の皆様にお見舞い申し上げます。
また、亡くなられた多くの方々のご冥福を衷心よりお祈り申し上げます。
 1945年の敗戦後、廃墟となった国土の復興を成し遂げた日本。
このたびの大震災・大津波・原発事故の被害はストックとフローの双方で阪神大震災の3倍以上の規模といわれている。
 今回の大震災により、生活する場としての「住宅」、生きるための「食」、エネルギーとしての「電力」が未曾有の殷損を被った。
「住宅」「食」「電力」に関して、抜本的対策が早急に実施されないと、国内市場が縮小し、生産体制が崩壊し、雇用が縮小する従来に例を見ない空洞化現象が生じることになる。
 日本経済を長期停滞から成長軌道へ復帰させる1,000年に一度の機会である。
政府主導の産業政策(住宅、農林水産、エネルギー)はその国の産業の成長力や競争力と雇用に多大に貢献することになる。
 特に、低炭素社会への円滑な移行が国の重要政策となっている中で、国産材の利用促進による地球温暖化防止及び地域経済の活性化による雇用の安定・増大のため、我が国林業・木材産業の長期的、持続的発展という新たな視点から以下の対策を要望致しますので、宜しくご高配の程お願い申し上げます。


Ⅰ.内需の柱としての住宅政策

 東日本大震災による被災地での復旧・復興、住宅の補修・建替え住宅へ、全額補助金支給による早期復旧・復興を図る。
木造住宅をはじめとする新設住宅着工及び耐震、省エネ等住宅リフォームの増大のための、大胆かつ抜本的な補助、金融、税制措置を講じていただきたい。

  1. 長期優良化住宅や耐震補強・省エネルギー設備リフォーム等に対し、税制・金融・補助事業拡充による住宅建設促進策の拡充。

    ○ フラット35S(優良住宅取得支援制度)の金利引き下げ拡大
    (年率1.0%の引き下げ)の期間延長
    ○ 住宅エコポイントの延長・拡充
    ○ 住宅ローン税制の延長・拡充
    ○ 長期優良住宅促進事業の充実
    ○ 住宅に係る消費税の廃止

  2. 住宅取得に関する、生前贈与非課税枠の金額(1,500万円)を3,500万円(平成15年)創設時に戻す。

    親世代が子世代に対し、本施策により非課税で贈与が可能であると、二世代住宅を含め子世代の住宅取得が容易となることから、減少した住宅建設が一段と進むと考えられます。

  3. 住宅の省エネルギー化及びスマートグリッド化による独立型電気活用システムに対する税制・補助事業の拡充。

    ○ 太陽光発電設備、風力発電設備、家庭用蓄電池等の設備並びに活用のシステムに対する補助事業により早期普及を行う。

  4. 新耐震基準以前に建築された住宅の建替に関する減税措置

    社会資本の整備は台風、地震国として、国民の安全性、防災性、耐震性の見地から税制の優遇があってしかるべきであります。
    安全・安心の社会資本整備の見地から、1981年新耐震法以前に建築された住宅の建替を積極的に推進し、阪神淡路大震災で死傷者の80%が新耐震法以前の古い合法木造住宅倒壊によって引き起こされた惨事を二度と繰返さない政策が望まれます。

    ○ 新耐震法施工以前の住宅建替1/3補助金

  5. 環境配慮木造住宅部材加工の効率的な製造設備の整備・廃棄・新設への助成制度の創設

    耐震・耐火・耐久・防災・安全の長期優良住宅の建設促進のため、木造枠組壁工法部材加工工場(コンポーネント工場)及び軸組工法(在来工法のプレカット工場)の製造設備の整備・新設等(等には、設備廃棄を含む)に対する新たな助成制度を創設する。
    CO2排出25%削減の達成と内需拡大による雇用創出を国是とするのであれば、長期優良住宅・建物の振興を図るに当って、国産材、輸入材に関わらず、その基盤整備として、木材産業の国内製造・加工設備機械の一層のコンピューター化を推進し、製造・加工の国内回帰を図る内需拡大策の抜本的取組が不可欠である。また、そのための既存設備の廃棄のための補助制度も不可欠である。

    ○ 枠組壁工法・軸組工法の部材加工機械補助率を1/2とする。

  6. 耐震補強に関する、耐震工事金額の半額補助金を実施

    全国世帯数の95%以上が耐震補強住宅となる国の施策の実現が、本施策により早まると考えられます。

  7. 二戸目の住宅取得にも生前贈与の非課税枠適用

    時間を移動する事によって、もう一つの風土という空間を亨受する精神的豊かさが人間性を育み、文化や伝統の調和されたコミュニティーが形成されます。
    都市の生活と田舎の生活を共に手にする事が出来ます。
    世界一の金融資産を動かす仕組作りが閉塞した現時の日本には必要です。


Ⅱ.林業・木材関連産業政策

 このたびの大震災においては、宮城県石巻市、岩手県宮古市、同大船渡市の3市に立地する合板、単板企業8社が被災しており、その生産量は我が国の合板生産量の約30%程度となります。

 我が国の合板等木材産業と致しましては、仮設住宅の建設等の復旧活動や未来にわたる優良な住宅資産の形成、公共建築物等の木材利用の促進に不可欠な資材である国産合板等の木材製品を安定的に供給していくことを木材産業界の総意として取り組んで参りました。

 被災企業におきましては、第一次補正予算等を活用して生産ラインを再整備し、お陰様をもちまして7月下旬から地域の間伐材等を使用して生産・出荷を順次再開しており心より御礼申し上げます。

 しかしながら、復興の基礎的資材となる合板等の安定供給はもとより、間伐等の森林整備の推進、地域経済の活性化、雇用の確保・増大そして木質瓦礫の処理・有効利用等のため、ひいては「森林・林業基本計画」の木材自給率50%の目標達成のためには、本格的な合板等の生産施設の整備と国産材を使用した木材製品の需要拡大が不可欠であります。

 また、木材産業と致しましては、地球温暖化防止(CO2排出削減)を進めていく上で、炭素固定に資する木材利用を推進するための助成制度の創設を要望致します。

 木材は重量の半分が炭素で、燃えるか、腐朽しない限り炭酸ガス(CO2)は発生しません。この木材の特徴を利用している木材・木材関連製品(合板・繊維板・集成材・木質ボード、木製家具・建具、製材等々)は常に炭素を保有し、商品としてある限り、炭酸ガスを放出しません。

 木造住宅・建物はあらゆる木材、木材関連製品の集合体です。最近行われた LCA(ライフサイクル評価)では、木造、鉄骨造、コンクリート造の住宅の環境に対する影響を比較し、材料の生産と建設において、鉄骨造の場合は26%、コンクリート造の場合は31%も、木造に比べて温室効果ガスの排出量が多いと報告されております。

 また、林業経営活動による森林吸収源対策として、森林整備・保全の推進が必要である事は論を持たないところであります。健全な森林が健全な河川を維持し、豊穣の海を育んでおり、このサイクルが日本の直面しているCO2排出削減と食の安全・自給率向上に貢献する事になると確信しております。

 日本は、2020年までに炭酸ガス排出量を1990年比25%削減するという国際公約を発表しておりますが、このような中で今後、10年間で国産材自給率50%とすることを目標とした「森林・林業再生プラン」がとりまとめられ、この達成のため、公共建築物等の木材利用促進に関する法律が制定・施行され、さらに、森林法の改正及び森林・林業基本計画の見直しが行われました。

 これらの施策の推進に当たっては、是非とも合板、製材等の国産材(地域材)の利用促進を明確に位置付けて頂き、我が国林業・木材産業の長期的、持続的発見という観点から以下の対策を要望致しますので、宜しくご高配の程お願い申し上げます。

  1. 「森林整備加速化・林業再生事業」に係る基金の積み増しと事業期間の延長による合板、住宅部材加工機械等の木材産業設備機械の再整備への高率助成。
    (第3次補正予算関連)


    ○ 地域材を活用する我が国合板等木材産業は、日本の森林再生の一翼を担うとともに地域林業の振興と雇用の確保を通じて地域経済の発展に貢献している地元密着型の産業であります。被災した企業が再び立ち上がるため生産ライン等生産設備の再整備及び木質瓦礫の処理・有効活用を行う関連施設の整備にあたり、平成23年度の第3次補正予算において、高率補助率(3/4)の助成措置を要望致します。

     この場合、合板等製造用の原料丸太の需給の安定や木質瓦礫の効率的処理、被災者の雇用確保等の観点からは、被災した3県(岩手県、宮城県、福島県)のみならず、隣県等広域的な連携・協力が重要です。このため、三次補正予算におきましては被災3県のみを対象とした補助事業ではなく、隣県を中心とした広域的な助成を可能とする「森林整備加速化・林業再生事業」に係る基金の積み増しと事業期間の延長が不可欠です。

     また、平成23年度一次補正予算事業の「災害復旧関係資金利子助成事業」の農林漁業施設資金につきましては、実質的に無利子、無担保、無保証貸付けとなっておりますが、被災した企業が融資を受ける場合、基本的に森材を所有していることが必要とされており、森林を所有しない被災企業(木材産業者)でも、日本政策金融公庫から無利子、無担保、無保証の貸付けを受けられるよう条件改定を強く要望致します。

  2. 被災企業に対する「震災損失の繰り戻しによる法人税額の還付の特例」に係る繰り戻し期間の拡大について

     平成19年の改正建築基準法、平成20年のリーマンショック等により新設住宅着工戸数は平成18年の129万戸から、平成21年には78万戸にまで急減しました。住宅建設が需要の8割以上を占める木材産業にとって、極めて厳しい経営環境となっており、今回の特例措置の恩恵を受けられないことから、1,000年に一度と言われる大震災であり、また、繰り越し損失の相殺も7年であること等に鑑みて、この繰り戻し期間を5年から7年程度に拡大して頂くようお願い申し上げます。
    被災復興の再建は地域経済の復興、雇用の創出、そして、重要な復興資材の安定的供給の要となるものであります。

  3. 地球温暖化防止(CO2削減)のための新たな税制の創設

    ①炭素固定に資する木材利用を推進するための税制上の優遇措置を講ずること。
    ②平成23年度からの導入が検討されている「地球温暖化対策のための税」につきましては、間伐等の森林吸収源対策や木材の需要拡大等森林・林業・木材産業の発展のために使用されること。

  4. 国産材の(地域材)の需要拡大施策の推進

    ①国(国土交通省、農林水産省等)及び都道府県等が行う「地域材」を活用した住宅などの木造建築の促進のための、各種の補助事業や利子助成等の支援事業について、その実施要領、仕様、採択要件に製材等の軸組材のみならず、合板等の構造用面材料を含めた「地域材を活用した関連製品」の明記による事業対象化。
    ②マテリアル利用を優先したカスケード型の木材利用を基本とした森林資源の有効活用。


Ⅲ.緊急経済対策の提案

 4年連続で増加し平成18年度は1,285,246戸と回復基調にあった新設住宅着工数は、平成19年度には1,060,741戸へと大幅に減少しました。
平成21年度は788,410戸と激減し、急激な環境の変化等により低迷しており、建築関連中小企業にとって激しい状況が続いています。

 このような状況を踏まえ、今般、従来のセーフティネットの概念を超える保証制度の期間限定支援としての「緊急保証制度」が創設され、強力な金融支援策が講じられたことに深く感謝申し上げます。

  1. 中小企業に対する運転資金の貸出継続と業界縮小による取引量の減少に伴い約定返済の繰り延べ措置を受けている企業に対して「震災対応資金特別融資」の受付措置。

     繰り延べ措置を申請し、現在継続中の企業への資金繰り支援に対し、保証協会は貸出禁止中であるが、現時の大震災に対して、準備した「震災対応資金特別融資」の緊急救済措置を要望します。

  2. 法人の負担軽減

     グローバル化によるメガコンペチションの時代にあって、国際競争力の観点からも法人税の恒久的な軽減を要望します。

     成長戦略の観点から内需拡大と雇用創出、企業の環境改善、設備投資創出、従業員のベースアップ、等々の見地から中長期的な内需拡大を図って戴きたい。

     世界の法人税率は、韓国24.20%、デンマーク25.00%、スイス25.09%、フィンランド26.00%、スウェーデン26.30%、イタリア27.50%、イギリス28.00%、ノルウェー28.00%、ドイツ30.18%、カナダ31.32%、日本39.54%。

     上記の通り日本が最も高く、税制、労働政策、為替で日本企業は窮地に立たされ、競争力の低下で雇用が減り、税収が激減する悪循環に陥っています。

    ○ 実効税率30%へ引下げ。課税ベース拡大厳禁。

以上、13項目について、ご検討の上、是非実現されん事を要望いたします。
以上