時の話題
全木機ら政府首脳へ再び要望書

住宅税制の改正求め関連14団体で


▲全木機・原口博光副会長(上・中)、日合連・井上篤博会長(上・左)をはじめ関連14団体の代表は、経産省・二階俊博大臣(上・右)並びに国交省・金子一義大臣(下・中央)に住宅政策の改正を求め直訴した

  今度は経産省の二階俊博、国交省の金子一義両大臣に直訴―――。
平成14年から政府へ住宅税制の改正に向けた陳情を行っている(社)全国木工機械工業会(東京都港区芝公園三ノ五ノ八・機械振興会館別館、橋本恭典会長、電話〇三−三四三三−六五一一)は、緊急の経済対策として中小建築関連企業への金融支援や、木材関連産業での設備資金の低利融資などを盛り込んだ要望書を再び提出した。
要望書は両大臣のほか、公明党の太田昭宏代表や自民党元幹事長の武部勤・党改革実行本部長、また自民党筆頭副幹事長の原田義昭氏、国交省の和泉洋人住宅局長らにも直接手渡されたが、要望が一貫して住宅政策に絞られているのは、同政策こそが(木工機械などの需要にも結びつく)内需の柱として位置づけているからだ。

  関連一四団体との連名でまとめられた要望書は、昨年の一二月二二日と二四日の両日にわたって提出されたが、この提出を受けて一月二〇日午後、東京・芝公園の機械振興会館で会見に挑んだ原口博光副会長は、「これほどの数の団体がまとまっているのは他にない」とし、「その連盟での要望だからこそ実現する可能性は高まる」との見通しを述べた。
要望書は一四年の扇千景大臣(当時)に始まり、これまで武部、北川、中川、甘利、冬柴、そして今回の二階、金子両氏と、時の国交省と経産省らの大臣に手渡されてきたが、初の提出時からその陣頭に立つ原口博光副会長は、「大臣らと面談の前には要望書の主旨を何回も書き直して担当官へ渡してある」ことはもちろん、その実現には結局のところ、「熱意と要望内容如何であろう」との見解を示唆した。

  今回の要望書では、経済環境の急激な変化で業績が悪化した業種に適用されるセーフティーネット(経済環境変化対応資金)の運営などに、国の協力と支援を求めている。
「これまでの概念とは違った提案を事前にしてきた」(原口氏)ことで、このほど初の木工機械販売業を含む約六五〇の業種が指定されたが、「その事務処理などの保証協会を含めて民間の金融機関だけに任せず、国も前向きにフォローてほしい」からで、同時に金融機関からの借入金利の引き下げも要望した。

 二階経産相「今後は直接私へ」

  「これに関して二階大臣は、なんと大臣として初めて銀行の金利問題にも踏み込んだ」という原口氏はまた、驚くことに「『今後は私に直接申し入れてほしい』と二階大臣が私に言ってくれた」ことを明らかにした。
その視点や要望書の論理性などが評価されたに他ならない。
  森林バイオマスの利用についての支援とともに、木材関連産業の設備投資促進へ低利融資と減税の拡充も求めた。
改正建築基準法の施行による審査機関の遅延、石油高騰に伴う資源高、そしてサブプライム問題による金融システムの崩壊、というトリプル受難による経済の延期停滞を防ぐ視点からの要望だが、グローバル化による国際競争力の強化については、法人税の恒久的軽減を求めている。「先進国の欧米では二〇〜二五%に対して日本の現行は三九%」(原口氏)と企業負担がはるかに大きいからだ。

  これまでの外部依存から内需主導型への経済シフトが急務の中で、その柱となる住宅産業の予算は「国家予算全体の〇.二%にすぎず、イギリスの一.八%に比べて少ない」と指摘する原口副会長はまた、基本的に住宅消費税の廃止をこれまでも強く求めている。時限立法の住宅ローン減税などは駆け込み需要こそ期待できても、適用期間後の反動はその比でなく、アメリカやフランスは非課税、イギリスではゼロ税率などと、国民への住宅取得負担を軽減する政策的配慮が欧米先進国ではなされているのからだ。
  住宅ローン利子の取得控除制度の創設も引き続き要望された。借入金額や控除期間を設けず、土地や建物にかかる金利を所得控除することが住宅の取得促進に結びつくからで、そのためには「時限立法ではなく、恒久的な制度が必要(原口氏)と考えている。
  地震国の日本、住宅の耐震工事にも一層の優遇措置を求めている。先の構造計算書の偽造問題は「本質的に耐震の重要性に関する知識と技術の希薄さと、道徳なき経済最優先主義が引き起こした犯罪」(原口氏)であるが、「耐震工事自体はリフォーム時に併せて行えば普及が大幅に進む」だけに、「まだまだ周知が進んでいない設計者などへの啓発」とともに、その費用などに対する優遇措置が必要というわけだ。ただ、その工事が不可欠な新耐震基準前の住宅などは膨大な規模の内需に直結するだけに、原口博光副会長は「その既存住宅への対応策なども改めて盛り込み、早急に陳情したい」意向だ。



 なお、この要望書の提出に参加した全木機を除く一三団体は以下のとおり(順不同)
▽(社)全国木材組合連合会(並木瑛夫会長)
▽日本合板工業組合連合会(井上篤博会長)
▽日本合板商業組合(吉田繁理事長)
▽日本集成材工業協同組合(齋藤敏理事長)
▽日本繊維板工業会(井邉博行会長)
▽全国建具組合連合会(上中節彦会長)
▽(社)日本家具工業連合会(長原實会長)
▽(社)国際家具産業振興会(加藤知成会長代行)
▽東京都家具工業組合(土井清理事長)
▽全国木造住宅機械プレカット協会(齋藤陸郎会長)
▽日本木造住宅耐震補強事業者協同組合(小野秀男理事長)
▽日本機械鋸 ・刃物工業会(鈴木寛善理事長)
▽全日本木工機械商業組合(上阪太一理事長)
全木機ら木材産業一四団体が政府へ提出した要望書の中身(要旨)

  金子国交相と二階経産相らに直接手渡された(社)全国木工機械工業会(橋本恭典会長)らの要望書。住宅税制の改正を求めるもので、その提出は今回で実に八回目を数えるが、その中に盛り込まれた要望事項は関連一四団体の切実な願いが集約されているだけに、政府首脳にとっても決して軽視できないはずだ。しかも、この度重なる陳情が後に新たな税制改革となって実現した例もあるだけに、この要望書の持つ意味は軽くない。そんな強い思いが込められた要望書の内容(要旨)は次の通り。



内需の柱としての住宅政策の提案

  サブプライム恐慌を発端とする(世界的規模の)金融システムの崩壊で、わが国の経済体制は内需主導型へと以降する潮目にあるが、その柱となるのが住宅政策であり、経済活性化には大きな役割を担わなくてはならない。
そして「日本全ての家族に良質な住宅と居住環境を提供すること」の目標には、長期的な視点にたった住宅税制へと改革しなければならない。

@CO2の削減など地球温暖化防止(に寄与する)製品・業種への優遇税制の創設
  =炭素固定に資する木材利用を推進するための税法上の措置

  • 温暖化対策を進める上でCO2を吸収する森林の整備・保全が強く求められている。
    木材は重量の半分が炭素で、燃えるか、腐朽しない限りはCO2は、発生しないため、この特性を利用した木材や木材関連商品(製材、合板、集成材、木質ボード、木製家具、建具など)は商品としてある限りCO2を放出しないが、これらの製品の中には廃棄された木材をリサイクルし、再び商品化されたものもある。このように温暖化の防止に貢献する商品を販売・製造製造する業種に優遇税制を要望する。

A住宅消費税の廃止
  • 時限立法での住宅ローン減税は、駆け込み需要として景気対策に大きな効果があっても控除適用期間終了後の反動はその比ではなく、また期間限定の減税では購買のタイミングと選択肢を狂わせ、経済全般にわたって大きな悪影響を及ぼす。
  • また、税の公平さからも問題を残す。生活する上で大切な場となる住宅は、耐震・耐火・耐久・省エネ・バリアフリー・環境配慮等高品質な住宅ほど高額の税がかけられることになるが、住宅にかかる消費税は、米、仏が非課税、英国はゼロ税率などと、国民の取得時負担を軽減する政策的配慮が政策的になされている。今こそ税収確保を第一とする徴収側の倫理脱却で硬直した税制を改革し、国民主権の国家として国民の立場に沿った、そして時代の変遷に適合した発想への転換が強く求められている。

B住宅ローン利子の所得控除制度の創設
  • 良質で耐久性ある住宅の取得を促すには、借入金額や控除期間を限定せず、土地・建物にかかる金利を所得控除する制度が必要である。
  • 二一年度の税制改正では、過去最大規模の六〇〇万円が住宅減税として政府与党で合意、税制大綱にも明記されたが、同制度は恒久減税とすることが望ましい
  •  米国では過去80年以上に亘って、この制度は何百万人もの家族に大きな恩恵をもたらしてきました。
    当初、政府関係者は、この制度を導入すると、税収が減少し、予算が足りなくなるのではないかと危惧されていましたが、実際に施行されると、住宅所有者における可処分所得の増加によって、いろいろな家財へと消費は広がり、税収基盤が強化し、経済の活性化に大きく貢献する結果となりました。
    21年度の税制改正では、過去最大規模の600万円が住宅減税として政府与党で合意され、税制大綱に明記されたことは光明を見出した感が致しますが、本制度については恒久的なものとなるよう更なるご検討をお願いします。

C.新耐震以前の住宅の建替え・耐震改修工事を促進する優遇措置の創設
  • 耐震改修の普及は地震国日本にとって、住宅の地震対策の推進を図るに当っての施策作りが重要である。
    「構造計算書偽装問題」は本質的に「耐震性の重要さ」の知識・技術・道徳なき経済優先主義が引き起こした問題である。
    リフォーム工事を行うに当っても、そのタイミングに、耐震診断と改修工事の提案がなされていれば、耐震改修の普及は大幅に進むものと思われる。
    しかしながら耐震改修に要する費用負担は大きく、普及促進のためには各種の優遇措置等の支援策をご検討頂きたい。

D.不動産の登録免許税、不動産取得税の軽減措置の延長、恒久税化

E.買い換えに伴う譲渡損失の繰越控除の拡充
  • 生活環境の変化に伴い、消費者が自由に住み替え・買い替えが可能な譲渡損失繰越控除の改善。
  • @ 現行所有期間要件(過去5年以上所有)を廃止。
      短期の買い換えにも適用する。
    A 売却後、借家、ケアー施設等に入居した場合も適用する。

F.買い換えに伴う譲渡所得の課税軽減

G.住み替えに伴う残存住宅ローン繰越控除

H.二戸目の住宅取得にも生前贈与の非課税枠適用
  • 時間を移動する事によって、もう一つの風土という空間を亨受する精神的豊かさが人間性を育み、文化や伝統の調和されたコミュニティーが形成されます。
    都市の生活と田舎の生活を共に手にする事が出来ます。
    世界一の金融資産を動かす仕組作りが閉塞した現時の日本には必要です。
    これは金持優遇税制では決してありません。

以上、九項目について、ご検討の上、是非実現されん事を要望いたします。

                                                                 以上




緊急経済対策の提案

@.建築関連中小企業に対する金融上の支援
  • 4年連続で増加し平成18年度は1,285,246戸と回復基調にあった新設住宅着工数は、平成19年度には1,060,741戸へと大幅に減少した。
    今年度は1,300,000戸が予想されたが、急激な環境の変化等により低迷しており、建築関連中小企業にとって厳しい状況が続いている。
    このような状況を踏まえ、今般、従来のセーフティネットの概念を超える保証制度の期間限定支援としての「緊急保証制度」が創設され、強力な金融支援策が講じられたことに深く感謝申し上げます。
    本制度においては、650を超える業種指定により、制度の利用希望者は極めて多くのなるものと思われます。
    各保証協会においては混乱を来さないよう最大限の努力をされていると思いますが、国におかれましても保証協会の事務処理に支障が生じることのないよう十分なご配慮をお願い申し上げます。
    また、中小企業の置かれている厳しい経営環境を踏まえ、金融機関からの借入金利についても引き下げ措置が図られるようお願いします。

A.木材関連産業における設備投資資金の低利融資及び減税の大幅な拡充
  • @改正建築基準法の大幅な審査遅延
    A石油高騰に伴う資源高
    Bサブプライムによる金融システムの崩壊というトリプル受難によって引き起こされた経済活動の停滞を防止する視点から不況時の設備投資資金の低利融資及び減税の大幅な拡充を強く要望します。

B.法人の負担軽減
  • グローバル化によるメガコンペチションの時代にあって、国際競争力の観点からも法人税の恒久的な軽減を要望します。

C.森林バイオマスの利用についての支援

以上、四項目について、ご検討の上、是非実現されん事を要望いたします。
以上 
ウッドミック 2009年2月号
関連リンク
 ≪展望≫内需の柱としての住宅政策の提案(社団法人 全国木工機械工業会)

 全国木工機械工業会
 全国木造住宅機械プレカット協会
 全国建具組合連合会
 日本家具工業連合会
 全国木材組合連合会
 日本集成材工業協同組合
 全日本木工機械商業組合
 日本機械鋸・刃物工業会
 東京都家具工業組合
 国際家具産業振興会
 日本合板工業組合連合会
 日本繊維板工業会
 日本木造住宅耐震補強事業者協同組合